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放射能濃度の迅速検査を通じて、風評を排除する正しい情報提供を支援

福島原子力発電所事故による放射能汚染の風評で、農産物や加工食品、水などの食品類だけでなく各種工業製品も深刻な打撃を受け、様々な混乱が生じてきました。横浜市鶴見区にある株式会社同位体研究所では、商品、製品などの放射能迅速検査を受託しながら、製造者や消費者が不利益を被らないための正しい情報を提供することに努めておられます。塙章社長から、お仕事の意義と放射能や検査をめぐる誤解や問題点についてうかがいました。


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放射能に対する誤解がはびこっている

同位体研究所は民間会社で、放射性元素の安定同位体比から、食品の科学的産地証明を行うことを主な業務としてきました。塙章社長によると、福島原子力発電所事故による放射性物質の拡散問題の発生以来、各種原材料や製品及び農地・倉庫などの放射能検査を提供する業務が急増しているそうです。 「水、野菜、繊維、化粧品、電子部品、工作機械、エンジン部品や段ボールなど幅広い分野の検査依頼が殺到しています。とくに国際原子力事象評価尺度(INES)の暫定評価が最悪のレベル7に引き上げられてからの仕事がいっきに増えました。食品についてはかなり厳しい規制値が設けられていますが、非食品には規制値がなく、輸出対象国では過剰な反応が目立ちます。例えば車のタイヤなども、走行する道路で放射性物質をまき散らす恐れがあるとして、検査データを要求される例がありました。世界中で根拠のない噂が広がっていて、中国などの場合日本の化粧品が放射能汚染されているというデマから、分析データをつけないと販売できなくなっています。また、ドイツやスイスを中心にヨーロッパ諸国もきわめて厳しい対応を見せています」 国内でも誤った情報が氾濫しているようです。食品汚染に不安を覚える人たちが、秋葉原などで販売されている放射能検査機を買い漁ったとの報道がされていますが、こうした機器では食品の汚染を判定することができません。 「安価に出回っている表面測定器は、ウランやプルトニウムなどの核種から出るアルファ線という放射線を測定する機器であり、食品汚染で問題になるヨウ素やセシウムから出るガンマー線を測ることができないのです」 また、これらの機械の測定単位も、人体への放射線の影響を考慮して設定された線量を示す単位であるシーベルトです。食品の規制値は放射線源の強さを示すベクレルなので、測定できません。 「政府が発表する地域ごとの放射能濃度の数値も私たちが測定した結果とはかなり違っている場合があります。例えば山の表側と陰などサンプリングの地点などによって異なってくるので、もっと詳細な採取地区を示すことが必要です」

放射能はうつらない

同位体研究所では、放射線検査の測定を、厚生労働省「食品の放射能測定マニュアル」に準拠して行っています。シンチレーションサーベイメーターという機器を用いて、単位重量当たりに含まれる放射能の濃度(単位:ベクレル)を放射性ヨウ素換算値で計測しているとのことです。  「1次検査で基準値以下ならセシウムに関しても安全ということになるので、そこで『汚染なし』という判断をします。基準値を超えていたら2次検査を行います。検査結果の報告は、ユーザーの要望によってまちまちです。『異常なし』の判定だけをすればよいものもあれば、基準値以下でも数値の記入を求められる場合もあります。さらにまず輸出品は国によって要求項目がますます千差万別です。厳密な核種を報告したり、ロット数をつける場合や輸送する船の名前まで入れることを求められる場合もあります」  しかし、多くのユーザーの考え方は錯そうしているようです。塙所長は「何を目的に何を計測しているのかよく理解されていないのが現状」と語られます。 「例えば野菜については規制値が2000ベクレルとされますが、これは葉物を中心にした規制値です。イモ類などは土中にあるので放射性ヨウ素の規制値は検出されるわけがありません。ところがイモ類についても『放射性ヨウ素はどうなっているのだ』ということで、検査が依頼されます」 千葉県で福島県の放射能汚染地域から避難してきた子どもが、「放射能がうつる」といじめられたという報道がありました。こうした誤解は、けっして子どもだけではないようです。 「たまたま高い数値の放射線が検出された物があると、すぐ隣に同じ物が置いてあれば『こちらにもうつって汚染されているだろう』と判断されがちです。しかし、放射能は透過するだけのものであって、うつるものではありません。放射性物質ならば付着すれば『うつる』ということになりますが、放射能を浴びたからといって放射性物質が付着するわけではないのです。放射能を浴びるということと放射能を発するということは別の話なのに、ごっちゃにされているのが現状です」

汚染農産物を焼くと危険は拡散される

現在では放射能汚染地域が指定され、住んでいる人たちの強制立ち退きが実施されていますが、当初はかなり汚染されていると考えられる地域でも、従来通りの生活が続けられていました。土壌の表面汚染が相当進んでいる田畑の耕作が行われているなど、情報が行き届かないうちに人々はかなりの放射線を被ばくしたと考えられます。 「汚染が認められた作物に灯油をかけて焼いたりしていますが、これは放射性物質を飛散するので、望ましくありません。思いきり高濃度の汚染物質をまき散らすことになってしまいます。今後のことを考えると、もっともっといろいろな対策を立てていく必要があります」  一方では、こうした情報はそれぞれの自治体などの意向によってしばしば意図的に流されていないという面があるようです。「その地域は危ない」と指摘することで、新たな風評被害が引き起こされることを心配して情報を抑える自治体もあるといわれます。

放射能が検出されても製品は捨てないで

福島原発周辺では、水素爆発が起こった直後からは放射能濃度はかなり低下してきたものの、下げどまりの状態で依然として放射性物質の供給が続いていることがうかがわれます。汚染自体はまだまだ続きそうです。今後収穫シーズンを迎える緑茶などの汚染も問題になるかもしれません。 「お茶の場合、放射性ヨウ素なら半減期が短いので、出荷される前に消えてしまうので問題はありません。ところが半減期の長いセシウムが検出されると大きな問題になってきます。現状ではまだセシウムの拡散は限られているのですが、予断は許されない状況が続きます」 一般に言われる放射性ヨウ素とは、放射性同位体のヨウ素131のことを言い、その半減期は8.02日です。放射線量は加速度的に減衰するものであり、半減期を超えると一気に弱まります。つまり、商品が市場に出回る頃には、ベータ線の放射はほとんど消失し、ヨウ素131そのものが無害の安定同位体に変わっていきます。 「野菜などは鮮度の問題があるため放射性ヨウ素が規制値を上回って検出されれば廃棄しなければなりません。しかし、非食品の場合は、仮に汚染が見つかったとしても、2週間すれば放射能濃度はゼロになるわけですからすぐ廃棄などをしないでください。放射能は残留農薬と違って違う物質に変わって、無害になるので全く心配いりません」 レベル7の評価がなされたことで、日本の自動車メーカーなどは手痛いダメージを受けています。いまや国内の輸出産業は生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされています。塙社長は、「放射能についての正しい情報を発信することで、少しでも日本の産業を支えることに貢献できれば」と話しておられます。

■同位体研究所の連絡先はホームページでご確認ください。
http://www.isotope.ac/